sek****

sekerto internacionalo

誰も押さない村

最寄り駅からの帰りはだいたいバスがなくなっている時間帯が多いので、歩いて帰ることが多いわたしです。それでもたまーに早くかえることができると、本当は歩いたほうがいいのにバスに乗って帰るようにしています(歩くとしんどいだけ)。夜遅くまで働いた時の方が歩いて帰るというのはなんか矛盾しているかのように思えますが、わたしにとってのご褒美的ななんかそんな感じで自分に甘えています。

 

そのバスですが、最寄りのバス亭は住宅地の真ん中にあるので、だいたい何名かが降ります。わたししか降りないのかなーと思っても誰か降ります。そう、このバス亭は誰かが必ず降りるバス停なのです。

 

小さいときのわたしはバスの停車ボタンを押すのが好きでした。幼いのに押したい。誰よりも早く押したい……。あのころは純真でした。今は違います。

「誰かに押させよう……」

別に誰が決めたルールでも無いのですが、停車ボタンは自分では押さないことにしました。

 

しかし、いざ自分が降りようと思っても誰も押しません。

「あれ、今日は誰も降りないのかな」と思って、自分で押して、降車すると誰かが一緒に降りてきます。

(降りるやつおったんかいな……)

 

まぁそうだよね、誰かいるよね。わたしの辛抱が足りなかっただけだよね。と反省し、次の機会にバス停の手前の信号まで待ちましたが、やはり誰も押さないので、押したところやはり誰かが一緒におります。やっと気が付きました。引っ越してしばらくが経ちましたがこの村は「誰も押さない村」だったのです。

 

そして昨日、意を決して「たとえ、通過したとしても押さない」ことに決めました。

 

せまるバス停、通過する手前の信号機、まだ誰も押さない……本当に通過しちゃう!

焦ったわたしは思わず禁を犯して、停車ボタンを押してしまいました。

「ピンポーン……つぎとまります」アナウンスが終わるか終わらないかの短い時間でバス停につきました。あー、今日は一人だったかーと思ったところ、おばさんも一緒に降りてきました。

 

(あ、しまった)

わたしはボタンを押したことを後悔しました。おばさんはこちらを一瞥すると勝ち誇った顔で、住宅街の中へ消えていったのでした。

 

もう、バスの停車ボタンで消耗するのはやめようかな。ふと、そう思いました。

 

(おしまい)