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ルトクド事件

お医者さんのことを人によっては「ドクター」と呼ぶ。



なんでお医者みんなが博士号を持っているわけでもないのに「ドクター」と呼ぶのか。
その疑問を長年持ち続けていたが、辞書を引くと単に医者という意味があるそうで。
なんだそんなことだったのかと思った。



それが、ドクターではなく「ドクトル」と聞くと、
人によっては「お医者さん」であったり、「まんぼう」だったりするのだと思います。



・・・



少し昔のこと。
オフィスの近くに古い開業医の病院がありました。
その建物は文化財登録もされている古い洋館で、
病院としては繁盛していなかったが、古い建物を写生するひとなどで、
絶えず人がいるようなところでした。



そこの門柱に白い大理石を彫った表札があり、
「ルトクド」と書いてました。
古い病院なので「ドクトル」を右から左に掘られたのだと思われます。



ある時、同僚と、その病院の前を通った時に、

「ルトクドってどういう意味なんだろうね?」
と聞かれました。

 

 

「前から疑問だったんだけど」
同僚氏は続けて言いました。



わたしはちょっと「ふふ」となって、
「あれは、ルトクドじゃないよ。右から読むとドクトルでしょ?」
と、ちょっとだけ得意気になって教えてあげました。



同僚氏は
「ああー、ドクトルか!で、そのドクトルって何?」
まだ得意そうにしているわたしに聞いてきました。



(おしまい)